会社を子に継がせる際に気を付けたい遺留分
先日、ご相談を承ったとあるお客様は、現社長から次男へ社長を交代しようとなさっていました。
社長の交代にあたり、現社長が保有する株式をすべて次男へ譲渡しようと考えていらっしゃいました。その他、会社の建物が現社長の名義となっており、これを次男に相続させようというお考えでした。
しかし、長男と次男は折り合いが悪く、次男に株式を生前贈与したり、会社の建物を次男に相続させた場合には長男が納得しないことが懸念されています。
このような場合に気を付けないといけないのが「遺留分」です。
遺留分とは相続人が必ずもらえる最低限の財産
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度のことで、兄弟姉妹以外の相続人には相続財産の一定割合を取得できる権利(遺留分権)のことです(民法1028条)。
民法第1028条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
- 一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
- 二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一
遺留分は、配偶者・子供(代襲相続人・非嫡出子[婚外子]も含む)・直系尊属という3種類の相続人に保障される、最低限の遺産の取り分です。被相続人(遺言者)は「遺言自由の原則」により自分の財産を自由に処分することができますが、残された相続人の生活保障といった相続人保護の観点から、これらの範囲の相続人には最低限の財産を保障しているのです。
相続される財産がこの遺留分を下回った場合、遺言書等で『本社として使用している建物を次男の●●へ譲る』といった内容が残されてても長男は遺留分減殺請求を行使し、遺産を取り返すことができます。
この場合の相続財産には生前贈与をもらっている兄弟がいた場合にはこの生前贈与分も含まれるため、今回のケースのように次男が生前贈を受けた自社株式も対象になります。
遺留分割合
1:配偶者のみ
配偶者:1/2
2:配偶者と子
配偶者:1/4
子 :1/4
3:配偶者と祖父母
配偶者:1/3
祖父母:1/6
4:配偶者と兄弟
配偶者:1/2
兄弟には遺留分が無い
5:子のみ
子 :1/2
特定の子(このケースでは次男)へ事業を引き継ぐために自社株やその他の財産を贈与や相続させる場合には、他の相続人(長男等)の遺留分に気を付ける必要があります。
後継者以外の相続人への相続財産が遺留分を下回った場合には、遺留分滅殺請求をされ、意図した通りに自社株や会社の経営に必要な資産が後継者へ渡らなくなってしまうことも考えられます。